How High

 会社の帰り。東京駅で昇りのエスカレーターに乗ろうとしたところ、降りのエスカレーターからおじさんが転がり落ちてきた。段を踏み外したらしく、5・6段転げ落ちて、頭というか額らへんを強打してノビてしまった。
 僕は、乗りかけた昇りのエスカレーターを降りて、おじさんに駆け寄って声を掛けたけど、返事がない。なおも声を掛けて、揺り起こすと意識が戻った。どうやら酔っ払っているようで、状況が分からないみたい。声にならない声を発している。
 ここまで、かなり人通りが多かったにもかかわらず、みんな一瞥して素通り。やっと、中村一義風の青年が協力してくれて、座ることもできないおじさんの両肩を二人で担いで、通行の妨げにならないように移動した。
 釣竿を持ったおじさんが駅員さんを呼んでくれたらしく、駅員さんに引き渡す。まだ立てないおじさんは、酒臭くてかなり酔っ払っている。外傷はない。駅員さんに状況を説明した。どうやら駅員さんは救急車を呼んだみたいだ。と、ここまででおじさんを駅員さんに引き渡した。
 この出来事と自分のとった行動は非日常的で、なんだかドラマチックだった。エスカレーターを上がりきり、しばらく歩くと、風景はいつも通りの東京駅に戻ってた。
 おじさんがその後どうなったか分からないけど、大きな怪我がないことを祈ります。